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トウガラシを使った動かしにくくならない局部麻酔

動きが鈍らない麻酔 サイエンスニュース-ニュートン

痛みをともなう手術の前に,決まって打たれるのが麻酔である。麻酔薬は,痛みの情報を脳に伝える神経細胞で,「Naチャネル」というタンパク質のはたらきをおさえる。しかし,このNaチャネルは運動神経など,あらゆる種類の神経細胞ももつものだ。このため麻酔を打つと,痛みを感じなくなると同時に,動きの感覚が鈍くなるという欠点があった。

局所麻酔を行うと動かす感覚まで鈍くなってしまうという副作用をなくす方法が発見されたという報告です。

トウガラシ

局所麻酔で最も身近なのは歯医者で抜歯や歯を削るときの麻酔ですね。歯医者から帰ってきた後に口をうまく閉じられなくなって、飲み物を口からこぼしてしまうという経験は誰に出もあるのではないかと思います。
このような運動感覚の鈍りは当然局部麻酔によるものなのですが、痛みの感覚、つまり触覚が鈍っているからではなく、それとは別に動きを関知する神経細胞も同時に麻痺しているからでした。痛覚を麻痺させる麻酔の副作用だったわけです。

本研究ではトウガラシの辛み成分であるカプサイシンを用いることで痛みしかなくならない局部麻酔を開発しました。

局所麻酔の仕組みには何通りかあるようですが、最もポピュラーなのは神経細胞の細胞膜に存在するナトリウムチャネルをふさいでしまうというものです。ナトリウムチャネルはナトリウムイオンを通す穴のようなもので、この穴がなにか物質によってふさがれると神経細胞の興奮が起こらなくなり神経伝達が麻痺します。これが局部麻酔の簡単な仕組みです。だからナトリウムチャネルを持っている神経細胞は痛みの神経であろうが運動を関知する神経細胞であろうがお構いなしに麻痺させてしまうわけです。

新しい局部麻酔の仕組み

今回の報告では、このナトリウムチャネルをふさぐ物質がうまい具合に痛覚の神経細胞にだけ嵌らないように工夫しています。そこで登場するのがTRPV1というチャネルとカプサイシンです。TRPV1は痛覚の神経細胞にだけあるチャネルで、普段は異常に高い温度(42℃以上)になると開くようになっているイオンを通すチャネルです。研究者らはこのTRPV1にカプサイシンが作用すると常温でも開くということを発見しました。

このことを使って、細胞の外側からではナトリウムチャネルをふさぐことのできない麻酔分子であるQX-314をカプサイシンによって開いたTRPV1を通して痛覚の神経細胞のなかにだけ入ることを発見しています。QX-314は細胞内側からならナトリウムチャネルをふさぐことができるので痛覚の神経細胞だけを麻痺させることができるというわけです。

この研究はまだラットで行われただけですが、人にも同じチャネルがあることはわかっているので効果は十分に期待できるとしています。これから臨床などの試験をするわけですからまだ実用化には時間がかかるかもしれませんが、歯医者の麻酔の後にこぼすのを注意しながら水を飲んだりするなんてことももうしなくて良くなるかもしれませんね。

トウガラシのカプサイシンはダイエット効果があることがよく知られていますが、不眠改善や翌日のエネルギー充填に大きな効果をもたらすという報告もあります。単なる辛み成分としてだけではなく色んな効能があるんですね。
紹介ついでに「九州でトウガラシをコショウって呼ぶ理由」なんていうのもあるんで興味のある方はどうぞ。

参考サイト
局所麻酔
痛みと鎮痛の基礎知識 - Pain Relief

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