日本語で記された文献などにおいて、溶媒中の微粒子が不規則に動く現象であるブラウン運動を説明する際、「水中で花粉が動く」と記述されているケースがしばしばある。

from aimée-michelle
ブラウン運動という言葉を覚えていない方でも「顕微鏡で花粉を見ていたら不規則に動いていた」という発見の逸話を覚えている方もいるかもしれません。この有名な逸話が間違っているというお話です。
ブラウン運動とは溶媒中(液体でも気体でも固体でもかまわない)の微少な粒子が示す不規則な動きのことです。この運動は水などの溶媒分子の熱運動による衝突によって引き起こされているもので、1827年に発見され1905年にアインシュタインによってその原理が明らかにされたというものです。
わかりやすいイメージとしてはこんな感じ(要Java)
ブラウン運動の仕組み
しかし、花粉はブラウン運動をしないのだそうです。
かくいう私も完全に「花粉」がブラウン運動をしたところを観測したのだと勘違いしていました。実験をしてみたわけでもない、大きさのオーダーを考えてみたわけでもないのにまるっと信じ込んでいたので衝撃的でした。
そもそもブラウン運動は溶媒の熱運動によって粒子が動かされるというミクロな運動であって、当然ながら大きい物体は動かされません。水中なら動かす側である水分子の大きさは1/10nmのオーダーなので10μm以上ある花粉を動かすのはちょっと難しいのだということです。(実際には動くけど、動く距離が微少で当時の顕微鏡では観測が難しい?)
花粉を観察していた際、細かな粒子が不規則に動く現象、いわゆるブラウン運動を発見した。
(中略)
上記において、ロバートが観察した「細かな粒子」は、正確には「花粉粒から出た細粒子」(tiny particles from the pollen grains of flowers、『PSSC物理』原著)であり、花粉そのものではない。
ブラウン運動発見の逸話で「花粉」がブラウン運動をしたわけではないのですね。花粉が水に浸ったことによって浸透圧で破裂し、中から流出したデンプンなどの微粒子がブラウン運動をした。これをブラウンは観測したそうです。
ではなぜこんなことになってしまったかというと
これがいかにして「花粉が動いた」に変化したかについて詳細は不明だが、少なくとも研究結果を伝承または翻訳する過程で起こった間違いに端を発し、多くの著名な学者までもがその誤解に気づかないまま増幅し、一般にまで流布する手助けをしてしまった経緯は否めない。
ということで要するに日本語に訳すときに間違ったりしたんじゃないかという琴だそうです。現在の教科書がどうなっているのかはちょっとわかりませんでしたが、少なくとも私が習ったころの教科書では「花粉が不規則な運動をしたのをみて」という記述だったような気がします。
実験もせずに信じるなという良い教訓になりました。
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