- 2004-04-22 (木) 7:58
- 生物
単為発生:卵子だけでマウス誕生 東農大、ほ乳類で世界初 [MSN-Mainichi]
Mouse created without father [Nature]
研究チームはマウスの遺伝子を操作し、染色体が精子に近い刷り込み状態になる雌をつくった。生後間もないこの雌の未熟な卵子(卵母細胞)の核を精子代わりに使い、別のマウスの成熟卵子に移植して胚を作成した。
胚を別のマウスの子宮に戻したところ、28匹の妊娠に成功。このうち2匹は健康な状態で生まれた。1匹は処分して詳しく調べたが遺伝子の異常などはなかった。残り1匹は「竹取物語」のかぐや姫にちなみ「かぐや」と名付けた。かぐやは通常の交尾をし、2度の出産に成功した。
通常では生殖には卵子と精子が必要なのですが,卵子だけでマウスの生殖に成功したという報告です. こういう生殖のことを「単為生殖(parthenogenesis)」といい,昆虫,は虫類,鳥類,魚類,植物でみることができる現象ですが,ほ乳類では起こりません. 世界で初めての報告です.
ではなぜほ乳類で単為生殖が起こらないかというと,その理由はほ乳類に「ゲノムすり込み(genomic imprinting)」と呼ばれるメカニズムがあるからです.
ヒトの場合染色体は46本でそのうち23本は父親由来,もう23本が母親由来です. このうち22本は同じものがペアであることになります(もちろん遺伝情報は若干異なります). 同じものがあるのでどちらか一方が働けば良いわけで,このへんで優性遺伝子,劣性遺伝子という概念が生まれるわけですが,一部の遺伝子で父親由来しかはたらかないもの(PEG遺伝子)と,母親由来のものだけしか働かないもの(MEG遺伝子)があり,これらがあるために父方(精子)と母方(卵子)双方からの遺伝子が必要になります. この遺伝子に関わる現象をゲノムすり込み,ゲノムインプリンティングと呼びます.
参考:ゲノムインプリンティング-世代に刻みこまれる時
ゲノムインプリンティングとホ乳類の進化
今回の報告ではこのゲノムインプリンティングを回避するために遺伝子操作した卵母細胞と同じく操作した成熟卵細胞を使って卵母細胞の核を成熟卵細胞に移植することで胚を作成しています. だからクローンではないんですね,母親を2人もつマウスということです.
成功率はかなり低く,妊娠までたどり着いても28匹のうち健康に生まれたのが2匹. 健康に生まれたマウスは通常の生殖能力を持っていたそうです.
河野教授は「研究は、ほ乳類の発生メカニズムの解明が目的で、ヒトへの応用は考えていないし、許されない」と話している。
そうですね,それは当然だと思います.
この報告によって,ゲノムインプリンティングの謎の解明に近づいたことは確実ですが,まだまだ解らないことだらけのようなので,これからの研究に期待したいところです.
ちなみに次のターゲットは豚で,もう実際に研究が始まっているようですね.
竹取物語のかぐや姫は罪を償いにこの星にやってきましたが,この「かぐや」はなにをしにこの星にやってきたのでしょうか.
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Comments:1
- glow 04-04-22 (木) 22:39
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ゲノムインプリンティングって言葉だけは何となく
耳に聞き覚えがあったのですが、なるほど!!>刷りこみは世代ごとになされる
ってくだりは目から鱗です。
だから、隔世遺伝が存在するんですね。新しい知識を得て、こんなになるほどっ!って
深く納得(感動?)したのは久しぶりかも・・・(笑)既存の知識や体験と科学的な理論なりが
結びついたときのこの感覚が
科学のおもしろさの、一端な気がします。



