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サルは統計学者のように計算する。

Cogitating monkeys can calculate statistics

Rhesus monkeys turn out to be pretty good statisticians, a study reveals.
They can accurately assess which of two behaviours is more likely to bring them a reward by summing together a series of probabilistic clues. And their reasoning is reflected in the firing rate of individual neurons in their brain.

アカゲザルは小さな統計学者かもしれない。
確率的に提示される手がかりを組み合わせることで、二者択一の回答のどちらが最終的に多くのご褒美をもらえそうかを彼らは正確に評価することができる。そしてこれらの推論はサルたちのニューロンの発火に反映されていることがわかった。

人間に最も近い部類のサルであるアカゲザルが情報を組み合わせて推論できること、そのときに脳のニューロンがその推論のメカニズムを支持する挙動を示していることが明らかになったという報告です。

ハワード・ヒューズ医科大学のTianming YangとMichael Shadlenは2匹のアカゲザルの推論をテストした。このテストでは10種類の異なる図形をサルに見せます。図形は簡単な形でそれぞれに+1〜-1までのスコアが設定されています。ここからランダムに4枚サルに見せ、その合計スコアがプラスなら赤、マイナスなら緑を選択すると正解、晴れて飲み物をもらえるというものです。
当然のことですがサルは図形にスコアがついていることを知らないし、プラスになると赤というルールも知らないという状況でこのテストが行われます。

このテストを日に数千回繰り返して数週間後、2匹のサルは4枚の図形からより正確に赤か緑を選べるようになっていた。その正答率は75%にもなるようになったそうです。
これはサルが確率的な推論を構築することを始めて示した事例で、実験を行ったShadlen自身もはじめは無謀な試みだと思ったそうです。しかし、サルがこうした振る舞いを見せたことにショックを覚えたと語っています。

また、電極を用いてサルの領域側頭部(視覚と注意を司る)64カ所のニューロンの活性を観察しています。ニューロンは4つのうち最初の図形に反応し、その図形に対応するスコアに比例した発火(ニューロンの活性化)を見せた。連続で図形を見た場合はそれぞれの図形に対して反応していてそこから最終的に赤か緑かを判断しているらしいことがわかったようです。

この観察結果はサルのニューロンが計算しているのを確認したといえ、特にニューロンが選択によって与えられる報酬について対数尤度比を計算しているようにも見えるとShadlenは話しているということです。

全くヒントのない状況下で問題を出されて行く経験を積み重ねていくことで、最終的にスコアに比例したニューロンの活性化が見られるようになるということが示されたわけですが、驚くべき結果だと思います。研究者らは認知と意志決定に関してこれからもより踏み込んだことを明らかにしていきたいと言っているので、これからのこの分野の進展が楽しみです。

どうしてシャイな生き物と凶暴な生き物がいるのでしょうか。

Life decisions separate ‘hawk’ from ‘dove’

anyone who has regular contact with animals - from farmers to pet owners - and they will tell you that animals have personalities. Some are docile, some are tetchy. Animals are individuals, with a range of temperaments, from aggressive to shy. Explaining the evolution of personality has been difficult. Now it seems the decisions animals make about how to live their lives and when to reproduce may be what gives them their personalities.

生物の性格がどうしてハトのようにおとなしかったり、鷹のように攻撃的だったり、様々なキャラクタを持つようになったのか。この質問に答えることができるようになるかもしれない研究について紹介します。

オランダのフローニンゲン大学のMax Wolfらの研究で、生物が生きていくためのトレードオフを考慮して数学的なモデルを構築し、どんな選択をした生物がどんな性格になっていくかをシミュレートしたそうです。

シミュレーションでは優良なエサ場がすでに占拠されている場合に、貧困なエサ場に行くか占拠がとけるのを待つかという選択を迫られたとき、より安全に行動するグループは内気で非積極的になるとされています。
この速度と安全性の関係がトレードオフで、速くしようとすれば危険。ゆっくりだと安全という簡単な関係です。当然、リスクを負えば種が絶滅する危険性もあるわけです。

このようなシミュレーションを何世代にもわたって行った結果、弱々しい性質の種はよりリスクを負うような進化を遂げて内気で非攻撃的な性格になり、反対に攻撃的な種はより攻撃的な種に進化する傾向があることが示されました。

この数理的なモデルはどうして生物種が異なる性格を持つのかという疑問を合理的に説明する初めてのものだということです。

この報告に対してカルフォルニア大学のJudy Stampsは報告されたモデルの性格付けが最初から内気と攻撃的の2種類になっているのは野生の生物にはあり得ないことで、改善すべき点だと指摘しています。
Wolfらの研究チームは遺伝的制約を組み込んだ別のモデルを構築して解決しているそうです。ここでいう遺伝的制約とは遺伝子によって発達と性格の発現が支配されているということを指しています。

Stampsはこの結果について、2つの性格と行動分布に適応性がある場合、遺伝のシステムが2つの性格分布を作り上げる多くの証拠があることになる。これには当惑してしまうと話しています。
Wolfらはイチゼロではない連続的な性格分布についてもっと考える必要があるとしています。

種の性格という言葉を使ったのですが、どうも行動と言い換えても成り立ちそうですね。この性格・行動を二元論で捉えてシミュレーションを行ってうまくいったということなのですが、やはりStampsが唱えるようにゼロイチではなく連続的に捉えてみたときにどうなるかを検討してみて欲しいと感じました。

また、文中に遺伝的制約という言葉が出てくるのですが、ここではあくまでモデルなのでこのモデルをふまえた上で、なんらかの証拠がウェットな実験で示されると大変面白い展開になるのではないかと思います。
進化についてのシミュレーションは物的な証拠がなかなか出てこないのでかなり難しいと思いますが。それでも計算機屋は進化という言葉には引きつけられてしまいます。

魚のヒレが手足の起源であることがわかった。

How Fins Became Fingers

A living fossil fish is giving researchers a peek into the genetic machinery that would eventually lead to our hands and feet. The fins of the modern paddlefish Polyodon spathula, which evolved perhaps 200 million years ago, share a distinctive pattern of gene activity with the limbs of all four-limbed animals, according to a new report.

生きた化石である魚(ヘラチョウザメ)の研究によって、我々の手や足の遺伝的な起源が明らかになった。ヘラチョウザメPolyodon spathulaが約2億年前に獲得したと考えられているヒレは遺伝子の固有の進化を経てすべての4本足の動物の間で手足に関係する遺伝子として共有されていることがわかった。

魚のヒレから陸上動物が持つ足がどのようにできたかわかったという報告です。
魚のヒレが足になったと言われると、なんだか当たり前のことのようだけど、遺伝子的にこれが明らかになったのはめざましい発見だそうです。

この研究でターゲットになったのはヘラチョウザメというチョウザメの一種で「生きている化石」といわれる類の魚です。この魚は放射状のヒレを持つ魚で、この種の魚が肺魚へと進化し、さらに両生類、哺乳類へと進化していったとされているそうです。

研究者らはHoxという遺伝子群に注目して、このヒレがどんな風にできているか解析しています。
この遺伝子群は生物が体の形を作るときにいろいろなパターンで活性化して頭や腹、四肢などをつくる遺伝子群です。活性化する遺伝子のパターンで作られるものが変わるわけですね。当然、ヒレや腕もこの遺伝子群の中にある遺伝子の組み合わせによって作られるわけですが、そのときのプロセスが大きなポイントになっています。

4本足の動物は四肢を作るのにHoxが2段階の活性を持ち、前肢と後肢を別々に作ることが知られています。それに対して現在の魚(報告ではゼブラフィッシュを使ってます)は、1段階しか活性化せず、それは後のヒレを作っている。
ということから4足動物が前肢を作るプロセスをどこで獲得しているのかは謎のままでした。

しかし今回の報告で、生きている化石ヘラチョウザメはヒレを作るときにHoxが2段階で活性していることが明らかにされています。このことから研究者は過去には魚類も4足動物と同じ方法で分化していたが、2段階目を失ったのだろうと推測しています。

これは去年発見された陸上に初めて上がった魚類Tiktaalikが陸上に適応するための前肢を作る遺伝子パターンをすでに持っていたことを示し、今回の報告と矛盾せずうまく説明できるとしています。

シーラカンスやムツゴロウ(魚の方。念のため)などを見ていると容易にヒレが足になったんでしょ。と想像できるわけですが、遺伝子的には魚のヒレとヒトの腕を結びつける証拠は見つかってなかったんですね。これはちょっと意外でした。
これは進化の道筋を見極めるのはとても難しいということが垣間見えるエピソードなのかもしれません。

あと、現代の魚が違う方法でヒレを作っているということも不思議です。1つのプロセスが必要なくて1段階に退化したのなら、なぜ始めに持っていたのかという疑問です。これはそういうものだったというほかないのかな。

メスだけの水槽でシュモクザメの子供が生まれた。

Shark pup result of ‘virgin birth’

And then there were four… Here’s the scenario: three sharks are in a tank, all three are female and all were captured when they were sexually immature babies. They spend three years in the tank together without ever coming in contact with a male. Then, one day, a baby shark pops up.

あれ? 4匹いる・・・。
水族館で飼育しているメスザメ3匹の水槽で、性的に不完全なサメが生まれているのが見つかった。しかし、3匹のサメは水槽に3年間いて、その間オスとの接触はなかった。

シュモクザメのメスとサメ以外の魚しか入っていない水槽でいつの間にか赤ん坊が生まれていたという報告です。

このシュモクザメの子供が実際に生まれたのは2001年12月とだいぶん前の話で、サメの生態を考えた上で様々な憶測と議論が行われていたようです。水族館に連れてきたときにもう受精していた、またはサメ以外の魚と交尾をして子供を作ったなどの説があったようですが、どちらも否定されています。

前者に関して、シュモクザメは交尾後に精子を体内にためておくことができるという面白い生態が説明されていました。しかし、水族館に連れてきてから3年もたっているためその説は却下されたそうです。
後者については、交尾の痕跡が見つからなかったためだと言っています。「シュモクザメは交尾が乱暴なのであとがつく」と原文にあるのですが、いったいどんなことになっているんでしょ?

この子供は無性生殖によって生み出されたことがDNA検査によって証明されています。軟骨魚類の無性生殖は初めての発見で、これで哺乳類以外の脊椎動物で無性生殖をする例が見つかったことになるそうです。
ちなみに魚類という大枠ではないのは硬骨魚類ではフナなどが無精生殖することが知られているためです。

脊椎動物の無性生殖は単細胞生物のように分裂するわけではありません。卵細胞が受精をすることなく分裂し、成長することをいいます。

また、哺乳類の単為生殖に関してはココでも以前に「卵子だけでマウスが生まれた!」というエントリでマウスの研究室ベースでの単為生殖を紹介しました。これは人為的にがんばったっていう話ですが、今回のシュモクザメは自分自身で単為生殖しています。

この単為生殖は種の保存という意味ではある程度有効ですが、多様性に制限をかけるため減少傾向にあるシュモクザメにとっては単為生殖は降りに働くのではないかと考えられているようです。

毒ガエルの毒はダニが作った毒だった。

Toxic Frogs Get Their Poison From Mites

Tiny mites give some Central American poison frogs most of their toxic sting, researchers have discovered.

中米の毒ガエルの毒の起源がダニであることがわかった。

中米原産の毒ガエルは小粒な体ながらその身にまとっている毒は非常に強力な毒性を示すことが知られています。ヤドクガエルの毒を矢尻につけて狩りをするというのが有名ですね。この毒の起源がダニであることがわかったという報告です。

毒ガエルの毒はアルカロイドであることが知られています。しかし、カエル自身はアルカロイドの合成をすることができず、アルカロイドをどこからか調達していると言うことは以前からわかっていました。これまで、食料としているアリがその調達先として考えられていたのですが、本研究によってダニであることがわかったということです。

アルカロイドは自然界に多く存在し、毒性を示すもの、モルヒネなど鎮痛剤として使われるもの、カフェインのように身近なものまで様々あります。アルカロイドは様々な生体反応を引き起こすことがわかっていて、現在新薬の元となる物質としても注目を集めています。というか、そういうものでないとなかなか研究されないわけです。

今回の報告されたダニはおよそ80種類のアルカロイドを持っていて、このうち40種はこれまで天然には存在しないと思われていたような独自の構造を持ち、生物学的にも独特な効果を持つものであることがわかりました。このことは大変意味のある発見で、単に毒ガエルの毒の起源がわかったというだけではなく、医療分野にも影響を与える研究になるかもしれません。
というもの自然界に存在する化学物質は新薬の種(シード)として注目されているためです。現在では細菌から昆虫まで様々な生物の持つ物質が薬の原型とならないかどうか盛んに研究されています。一から合成するよりもずっと効率が良いわけですね。

また、カエルがなぜアルカロイドの毒性に対する耐性を持っているのか、食事から得たアルカロイドをどのようにして体表から分泌しているのかなどわからないことも多く、これからの研究の課題となると研究者らはしています。
このことに関しても生体でのアルカロイドの使い方についてヒトがカエルから教わることがあるかもしれない、アルカロイドを毒物とせずにうまくやっていく方法がもし見つかったらそれは大発見となると思います。

毒を持つ生き物で、自分では毒を作れないけど食物から抽出しているという生物はかなりたくさんいます。もっとも有名なのはフグかな? フグはテトロドトキシンを細菌から得ています。また毒を持つ貝もそのほとんどがそうだと考えられています。ちょっと前に話題になったドウモイ酸も海藻が生成しています。あとは毒を持つ鳥として知られているピトフーイの毒もえさとなる甲虫が作っているようですね。
ちなみにヘビは自分で毒を作っています。ほかにはどんなのがいるのかな?

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